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2012年3月 3日 (土)

やる時はやるのだと息巻く男・・・31

男は相変わらず飲んだくれていた。終末になれば、遊び仲間を家に連れこみ麻雀にふけっていた。飲み食い代は男が負担していたので、いつも女房はグダグダ文句を言っていた。

そんなある日のこと、男は黙々と仕事をこなしていた。すでに主任になっていたが、同期のライバル3人も主任で給料は1円の差もなかった。

常務がふらりと職場にやってきた。「ちょっと話があるんだが、手を抜けるかな」と男に声をかけた。男の職場は別館で小会議室は誰も使っていなかった。

男は、常務にお茶を出し、席についた。

常務:実は君にお願いしたいことがあるんだが、これからの話しを聞いて嫌だったら断っていいからね。と言いながら話し出した。

常務:君も知っての通り、今季の業績は芳しくない。それで新規業務を模索中なんだが、M社の計器用変成器を当社でノックダウン生産をやろうと思うのだが、君なら出来るだろう。君は元はM社の社員だしね。大まかな話しは先方とついているから、後は君の任せるがどうだ、やってくれるか。

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本来ならこの新事業は課長の仕事であるが、どうしたことか、課長と常務は犬猿の仲なのだ。

男:大変名誉なお言葉有難うございます。常務のためにも一生懸命やらさせて頂きます。と言って簡単に引き受けてしまったのだ(笑)。

男はこの時点から遊びは止めた。やることは山ほどあるのだ。通常の仕事の他、部長特命の仕事もやっていた。更に常務からの仕事。部長にお願いし特命の仕事は、一先ず休止にしてもらった。

翌日から6時に家を出た(マイカー)。会社には6時半に着いてすぐに仕事。8時40分就業だが、それまで通常の事務業務をこなしていた。

当社の就業タイムは8時40分~17時20分。1時間20分の休憩があることから実働7時間20分である。

でも、男は昼飯を食った後は机にへばりついていた。

新規事業案

1、M社から購入部品名の検討

2、当社作業体制確率の検討

等々、検討事項は山のようにあった。作業標準、作業手引書はISO規格(国際規格)のものを作成した(男はISO内部監査員なので得意なのだ)。最終的に決定したことは、板金加工から組み立て作業は旭川にある電気工事会社へ委託することとなった。技術指導は数か月に亘り男がやった。

いろいろ、問題はあったが生産体制は確立した。試作品が3台当社工場に入荷した。おエラさんが見守るなか、男は得意顔で新製品について説明した。

生産は軌道に乗った。業績は上向いていった。

それから半年が過ぎていた。常務がふらりとやってきた。そして耳元で囁いた、君を係長に推薦したからな。と言う。通常の人事異動は4月1日であるが、男は10月であった。

同期3人から一歩抜き出た。給料も1円の差も無かったが、万の差がついた。

この新規事業の成功により、更なる新規事業が襲いかかって来るとは夢にも思っていなかった。

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