金メダル「こだわらない」…中国選手が次々発言
【ロンドン=竹腰雅彦】北京五輪で初の金メダル数世界一となり、ロンドンでも米国と激しく金獲得を争う中国の代表選手から、「メダルは重要でない」との趣旨の発言が相次ぎ、注目を集めている。
メダル一辺倒の国策スポーツ政策からの脱却を求める声が、国内で高まっていることが背景にあるとみられる。
「ようやく分かったのは、メダルを取ることだけが真の勝者ではないということ」
競泳女子100メートルバタフライ銀メダルの陸エイ選手(23)は記者会見でこう語った。陸選手は、競技場で自分らしさを表現することが重要だと強調。合宿生活をした豪州の選手が皆リラックスしていたのに対し、「中国では練習し、練習を続けるために休み、また練習。趣味や自分の時間を持つこともない」と心情を吐露した。
射撃女子エアライフル銅メダルの喩丹選手(24)は帰国後、中国メディアに「金銀銅、入賞、それ以外の選手、そこにまったく差はない」と述べた。同種目では同僚の易思玲選手が優勝し、ロンドン五輪全体の金メダル第1号として脚光を浴びたが、喩選手は存在しなかったかのような扱いを受けた。北京で金メダル2個の女子体操・何可欣選手(20)も試合前、「目標を金メダルだけに置いていない。競技を楽しみたい」と抱負を語っていた。
国家丸抱えで選手を育成する中国ではメダル至上主義が貫かれてきた。中国のスポーツ政策を統括する国家体育総局幹部は、メダル争いと優れた成績を通じ、「愛国の情熱を示し、(今秋の)共産党大会を順調に迎える」ことが主要任務の一つだと強調。本命視されながら銀メダルに終わった重量挙げ男子56キロ級の呉景彪選手は競技後、肩を丸めて国民に謝罪。連覇を狙いながら、メダルも逃した体操女子団体総合の選手たちは「申し訳ない」と記者の前で涙を流した。
こうした中で飛び出した「メダルにこだわらない」などの発言は、北京五輪で金メダル数「世界一」を実現して以降の、中国国内のスポーツ観の変化が背景にある。当局も、国策育成選手を五輪で勝たせて威信を示すより、「スポーツの発展を促すことが、金メダル獲得よりも重要」(中国共産党機関紙・人民日報)との視点を打ち出すケースも出てきた。加えて、国際社会での存在感を一層高める中国にとり、金メダル量産による国家の威信誇示が、かつてほど重要ではないという「大国の余裕」もあるようだ。
一方、欧米メディアなどは、メダルを逸した中国選手が謝罪し泣くのを「なぜだ」と報道。一連の姿勢には中国の「異質イメージ」払拭の思惑もありそうだ。
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