パラリンピック:弱視で転向、新たな光 柔道・正木選手
毎日新聞 2012年09月02日 21時07分(最終更新 09月03日 00時04分)
【ロンドン和田浩幸】大会第4日の1日夜(日本時間2日未明)、柔道(視覚障害)の男子100キロ超級決勝で正木健人選手(25)=徳島県立盲学校=が中国選手を破って金メダルを獲得。今大会の日本勢メダル第1号に輝いた。柔道はロンドン五輪で史上初めて男子が金メダルを獲得できず、パラリンピックでも今大会男女を通じて唯一のメダルとなった。「お家芸」の威信を守った直後、「礼節を重んじる柔道の精神」を示そうと、表情を変えずに相手選手と両手で握手を交わした。
決勝は、試合開始直後に相手の技が崩れ、すかさず抑え込みに入った。「早く終わってくれ」。開始53秒。一本勝ちが決まると、一瞬上を向いた。「やっとここまでこられた」と万感の思いがこみ上げたという。
兵庫県南あわじ市出身。生まれつきの弱視だが、中1で始めた柔道ですぐに頭角を現した。高校は強豪・育英高に入り、3年時にインターハイで100キロ超級と団体戦で3位に。天理大に進学後も柔道を続け、周囲は五輪も夢ではないと感じていたという。
だが、4年生の時、弱視が進んだ。視力は0.03まで落ち、単位取得にも悩むようになった。
「新たな道」を勧めたのは、92年バルセロナ・パラリンピック金メダリストの高垣治さん(44)だった。正木選手の活躍や悩みを聞きつけ、視覚障害者柔道の道に誘った。就職のことも考え、高垣さんが教諭を務める徳島県立盲学校に入学。マッサージ関係の国家資格取得と、パラリンピックでの世界一を新たな目標にした。
視覚障害者柔道の100キロ超級選手は国内では少なく、練習相手を探す苦労もあるが、身長191センチ、体重155キロの恵まれた体格を生かし、昨年トルコで開かれた国際大会に初出場し、いきなり優勝した。
パラリンピックも初出場だが、柔道競技の不振を受け、期待は高まっていた。この日、初戦で優勝候補のアゼルバイジャン選手に一本勝ち。続く準決勝でもキューバの選手に優勢勝ちし、順当に決勝まで進んだ。
「本当に楽しかった。一番いい色のメダルが取れて、今日は柔道人生の中で最高の日になりました」。深く一礼して畳を降りた後、ようやく表情を和らげ、満面の笑みをうかべた。
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