発掘物の年代:誤差170年で測る測定法開発 日欧チーム
毎日新聞 2012年10月21日 21時01分(最終更新 10月21日 21時19分)
発掘された物の年代を、過去5万年間で誤差170年という極めて高い精度で測る「物差し」を、中川毅・英ニューカッスル大教授(古気候学)ら日欧のチームが作製し、19日付の米科学誌サイエンスに発表した。福井県にある水月(すいげつ)湖の湖底が役立った2万数千年前とされるネアンデルタール人の絶滅期など謎に満ちた古代史や気候変動の解明に役立つ可能性がある。
化石や地層などの年代の測定には、植物などが取り込んだ放射性炭素14の量が約5700年で半減する性質が利用されている。各年代の海底堆積物(たいせきぶつ)などに含まれる炭素14の量を分析して作られた国際的な物差しがあるが、海流の浸食作用などの影響で堆積物が乱されるため、誤差が数百年あった。一方、樹木の年輪を使えば正確な年代が測定できるが、残存試料は1万2800年分にとどまっていた。
チームは、福井県若狭町にある水月湖(水深34メートル)の湖底堆積物に注目した。この湖は、直接流れ込む川がないので地層が乱されることなく、葉などが1年ごとにきれいに積もるので、各年の炭素14の割合をより正確に分析できると考えたからだ。
06年、湖底4カ所を約70メートル掘削し、5万2800年分の地層の年代を確認。採取した葉の化石など約800個の炭素14の濃度を調べ、従来の測定法の精度を大幅に向上させることに成功した。
来年改定される炭素14を用いた国際的な基準には、水月湖のデータが反映されるという。中川教授は「世界一、精密な時計ができた」と語る。【阿部周一】
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