東大寺:観音立像の宝玉、弥生・古墳時代の輸入ガラス玉も
毎日新聞 2012年10月27日 20時34分(最終更新 10月27日 21時23分)
奈良市の東大寺法華堂(三月堂)の本尊、不空羂索(ふくうけんさく)観音立像(国宝、8世紀)の宝冠にあしらわれている宝玉のうち、3割が弥生・古墳時代にアジアから輸入したガラス玉である可能性が高いことが分かった。27日に開かれた東大寺主催の講演会で、宝冠を調査した中井泉・東京理科大教授(分析化学)が明らかにした。前時代の宝玉を意図的に転用したとみられる。
観音立像の頭部を飾っている宝冠には、1万数千点の色鮮やかな宝玉があしらわれている。これまで9割以上がガラス玉と分かっていたが、制作時期は不明だった。中井教授はX線による非破壊分析装置で20点を分析。15点は鉛が主成分だったが、5点は鉛を含まないアルカリガラスだった。
中井教授によると、国内最古のガラス工房とされる奈良県明日香村の飛鳥池遺跡(7世紀後半)では、黒や白の鉛ガラスが生産されており、観音立像の制作時期と合致。一方、青色系のアルカリガラスは弥生・古墳時代に中国などから大量に輸入されており、これを宝冠に転用した可能性が高いという。
調査に携わった井上暁子・日本ガラス工芸学会長は「特別な思いを宝冠に託し、先祖伝来の大切な玉を加えたのではないか」と推測している。宝冠は、来年1月14日まで奈良市の東大寺ミュージアムで公開されている。【伊澤拓也】
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